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人文学は、従来からそのような役割を果たし、そのことを通してそれぞれの文化を豊かにしてきたが、いままさにそのような役割が重要になってきていると言える。しかし、いま人文諸科学、そしてそれを担ってきた大学――とくに人文系の諸学部――に対するまなざしには厳しいものがある。大学はかつてのように普遍的な真理を、あるいは事柄の本来の姿を時間をかけて探究するという場所ではなくなりつつあるからである。効率化を求める社会の風潮のなかで、大学においても短期間で目に見える成果を出すことが求められるようになってきた。そのために、短期間で成果を出すことが難しい人文科学系の学部に対しては風当たりが強くなってきている。
しかし、人文科学系の諸学問、いわゆる人文学(humanities)が、人類が歩んできた歴史のなかで果たしてきた役割は決して小さくはない。むしろきわめて大きな役割を果たしてきたし、現代においても大きな役割を担っていると考えられる。
歴史をふり返れば、人文学の起源は、中世ヨーロッパにおいて形作られた大学の基礎的な研究と教育を担ったいわゆる自由学芸(artes liberales, liberal atrs)に遡る。自由学芸の意義をとくに高く評価したのが、イタリア・ルネサンスの人文主義者たちであった。ルネサンスの人文主義者たちは、ペトラルカ(Francesco Petrarca, 1304-1374)の表現を借りて言えば、人間が動物性(feritas)を脱ぎ捨て、人間性(humanitas)をまとうことによって「単なる人間から人間的な人間になる」こと、そして人間として完成することを目ざした。そして単なる人間から人間的な人間になるために重視されたのが「フマニタス」であった。フマニタスは「人間的な人間であること」、つまり「人間性」を意味すると同時に、「人間的教養」をも意味する言葉であった。そしてフマニタスを可能にするものとして重視されたのが自由学芸(artes liberales)であった。
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